口から食べるための科学

2019年12月15日

 年齢とともに食べる量が減り、栄養状態が悪くなるのは当たり前でしょうか。実は多くの場合、予防することができるのです。「入れ歯が合わなくて外している」「飲み込むのに時間がかかって多く食べられない」「食べるとむせるので怖くて食べられない」などが理由であれば、今すぐに対策をしましょう。
 私たちは食べ物を口で噛んで軟らかくし、ある程度噛んだら口の中でまとめて飲み込みます。すると絶妙のタイミングで呼吸するところが閉じ、食道に食べ物が流れていきます。
 入れ歯を外すと、噛まずに食べられる軟らかいものしか食べなくなります。すると、噛むときに使う筋肉は弱くなります。この筋肉は食べ物を飲み込む時も使うため、むせやすくなります。その結果、食べる量が減って低栄養状態になり、筋肉はさらに減るという悪循環になります。
 食べ物を噛める入れ歯を作り、調整して使えるようにしましょう。どうしても入れ歯が合わない場合は、口の運動をしっかりやりましょう。その際は、スルメを歯茎で数回噛み、手を使わないで逆側に移し、また歯茎で噛むという運動をしましょう。スルメは喉に詰まりやすいので軟らかくなったら捨てて、新しいものを使います。毎日3~5分運動しましょう。
 口から喉へ送り込むのに時間がかかる場合は、ゼリー状にしたり、ツルリとしたトロミ剤でからめたりしましょう。飲み込む時にむせなければ、少し後ろにもたれた姿勢を取ると食べやすくなります。
 むせやすい人は、呼吸するところが閉じる前に食べ物が送り込まれています。この場合は、少し前傾した姿勢にし、粘度のあるトロミ剤をからめると、食事がゆっくりと流れるようになり、飲み込みやすくなります。
 いろいろ試みてもうまくいかない場合は、嚥下内視鏡検査を行います。直径3.4ミリの極めて細い内視鏡を無麻酔で鼻から入れて、喉を食事が通過するところを直接観察します。どのような食事が安全なのかを簡単に評価できます。5分程度の検査です。
科学は進歩し、食事を食べたい希望があれば、今ではほとんどの方が食事を楽しみ続けられるようになってきました。