血管の老化である動脈硬化によって心筋梗塞や脳梗塞がおきますが、危険因子として高脂血症・高血圧・糖尿病・喫煙・遺伝因子・ストレス・加齢などが指摘されています。それぞれの危険因子は軽症でも、複数あると動脈硬化は飛躍的に進行します。しかし、多数の危険因子が偶然重なるのではなく、共通の発症基盤である内臓脂肪蓄積が最も重要だと分ってきました。
内臓脂肪蓄積はウエスト周囲径と関連があり、男性では85cm、女性では90cm以上が危険域で、これに高中性脂肪・低HDL(高比重リポタンパク)・高血圧・高血糖を加えた五項目のうち三つを満たすとメタボリックシンドロームという危険な状態です。治療薬服用中でも危険因子と考えます。日本ではこの危険な状態にある人が一千万人を超えると考えられており、十代でも増えています。
治療には何と言ってもライフスタイルの改善が優先され、補助として薬物療法が行われます。生活改善は一人ひとりに応じたきめ細やかさが必要で、標準体重の維持を目標に、適度な運動と食事に対する知識を身に付けることが大切です。また自分の意思とは関係なくたばこの煙を吸わされる受動喫煙も含めて禁煙が大切で、ストレス対策としての休養も忘れてはなりません。
食事療法としては、十分な食物繊維の摂取、カロリーの多い脂質や糖質の制限、夜遅くの飲食禁止等をしますが、自己流の食事制限ではなく、管理栄養士など専門家と相談しながら無理なく行うことを勧めます。体重5%程度の減量でもメタボリックシンドローム危険因子の改善が得られるそうです。