一般家庭向けのキズパッドの功罪

2004年5月16日

 キズが治るときは、傷の中で細胞が分裂増殖し、新しい組織が傷の中を埋め、皮膚が覆います。それには湿潤して外部から守られた環境(閉鎖湿潤環境)が必要です。この目的で開発されたドレッシング材(傷を覆う医療用具)にハイドロコロイドドレッシング材があり、1987年に医療用具として保険で使えるようになりました。
 ハイドロコロイドドレッシング材は柔軟性があり、板状で少し厚みがあります。傷の大きさより少し大きいものを貼り付けることで傷から出てくる浸出液をため込み、人工的な水疱(すいほう)を作ります。この人工的な水疱には細菌の増殖を抑え、傷を治す増殖因子を保持し、細胞分裂を促進する効果が証明されています。その結果、傷の痛みはほとんど無くなり、傷が早くきれいに治る画期的なものです。
 今までハイドロコロイドドレッシング材は医師しか使うことができませんでしたが、最近、一般家庭向けにドラッグストアでも買えるキズパッドとして発売されました。今後、すり傷や浅い切りキズ、浅いやけどなどで便利さを実感する人もいると思います。
 しかし、このような画期的な製品を使うには傷処置の基本を守る必要があります。傷処置の基本は(1)傷の中の汚れを水道水でしっかり洗い流すこと(2)キズパッドで密閉するときは消毒はせず、軟膏も併用しないこと(3)液が漏れたり密閉が無くなったら交換することなどです。また、かさぶたがあったり、筋肉や骨に至るような深い傷での使用は危険なのでやめておきましょう。