かさぶたの功罪

2002年12月15日

 傷ができてそのままにしておくと、かさぶたができ痒(かゆ)くなります。浅い傷の場合は、かさぶたを取ってもまたすぐにかさぶたができて、二、三回繰り返すと皮膚ができて治ります。
 しかし、傷が深いと、かさぶたを取ろうにもなかなか取れず、やがて細菌に感染して痛くなってきます。この段階で医師にかかる人が多いと思いますが、やや遅すぎます。
 かさぶたは、傷の表面が乾くことで傷の表面の細胞が死んでできるものです。かさぶたの下にはゼリー状の液がたまり、この液の中で細胞の分裂が盛んになって傷は治っていきます。しかし、かさぶたは細菌を通してしまうことが欠点で、傷が深いと治るまでに時間がかかり、そのうちかさぶたの下で細菌が増殖して感染してしまうのです。
 深い傷を負った場合は、感染させないために、かさぶたを作らないよう傷を乾燥させないで治療する方法を勧めます。医師はこの治療に、油性軟膏(なんこう)や皮膚を密閉する板状の製品(創傷被覆材)を使います。傷が皮膚の下まで及ぶような場合は、医師にかかり、かさぶたを作らないように処置を受けることが大切です。
 これまでは長年、傷は消毒して早く乾燥させ、かさぶたをつくって治すことがよいと考えられてきましたが、皮膚のメカニズムが徐々に解明され、傷を乾燥させるより、ぴったりと覆ったほうが早く治るということがわかり、ケアの方向性が大きく変わりました。