褥創(じょくそう=床ずれ)は、栄養状態の悪い寝たきりの人にできやすいものですが、その名の通り“ずれ”も大きく関係しています。ズレとは何でしょうか。
ベッド上に身体を起こし食事をしているとき、力の弱いお年寄りなどは姿勢を保てず、身体が次第に下がってきます。このとき、下がろうとする身体と、寝具や下着などに接触して残ろうとする体表との間に「引っ張り力」が働きます。この引っ張られる力のことをズレと呼びます。皮下の組織にズレが働くと、血液の流れが悪くなります。
ズレが起こるところは、仰向けに寝たときに圧迫される場所とほぼ一致します。したがって、寝ているときは圧迫によって、起きていてもズレによって血流の悪い状態が続きます。持続的な血流障害の結果、皮下の組織は壊死(えし)し、褥創が発生するのです。
さらに悪いことに、ズレの際は皮膚表面が摩擦のために傷つき、はがれやすくなります。表皮剥離(はくり)が起こると、褥創は一気に悪くなります。ズレは車いすに乗ったとき、体位交換で横向きにしたとき、移動しようとして身体を引きずったときなど、さまざまな状況で発生しますが、いずれも褥創の治療を長引かせる原因になります。
ズレ予防は「ベッドで身体を起こすときの角度は三〇度までで、ひざの下にモノを入れる」「車いすでは腰とひざの曲がる角度を九〇度にする」「体位交換は二人でする」などを心掛けてください。
床ずれ予防はズレ予防、床ずれ治療にもズレ予防が大切です。