床ずれは寝たきりになり食事も十分摂れなくなった低栄養の方にできます。寝たきりになると筋肉が減って骨が飛び出してきます。そして骨と皮膚に挟まれた部分に血が通わなくなって床ずれになります。床ずれの予防は、寝たきりにならないことと、栄養を付けること、また骨が出てきたら軟らかい床ずれ予防マットレスを使うことが大切です。
ところが3月からこのような原則を覆す新しい床ずれが多発するようになりました。寝たきりではなく元気に歩ける方で栄養状態も悪くない方に、この半年で7例も床ずれがありました。コロナウイルス感染拡大への自粛要請に対し、自宅にとどまり外出を控え、家でじっと座って、あるいは横になってテレビを見ていた高齢者でした。あるいは家で椅子に座ってずっとパソコンをしていた方たちでした。
床ずれは座った時に下になる坐骨部(ざこつぶ)、尾骨部(びこつぶ)、あるいは横向きに寝たときに下になる大転子部(だいてんしぶ)にできて痛みを伴っていました。できてまだ日が浅いものは、皮膚を見ただけでは何の変化もありませんが、皮膚を大きくつまむと、皮膚の下に硬くて痛い床ずれがありました。
時間のたったものは重症化し、表面がただれて潰瘍化し血が出ていました。1例では皮膚の下の硬い部分に感染がおこり、膿が出ていました。
いずれの方も、座る姿勢が悪く、また座るときに圧迫を減らせるクッションは使われていませんでした。軽症の床ずれでは圧迫を減らす床ずれ用クッションを用いるだけで治っていきました。しかし、重度の床ずれでは、床ずれ用クッションを導入しても治るのに長期間かかり、適切な傷の処置も必要でした。つまり、感染があるときは感染対策の治療、感染が治まれば傷んだ組織をできるだけ早く回復させる治療、そして最後は表皮化させる治療です。
同じ姿勢で横になったり座ったりする時間が長くなっていたときや、下になっていたところに痛みが出た場合、全身状態が悪ければもちろんですが、元気でも床ずれかもしれません。痛いところを触ってみて、そこが骨の出っ張ったところなら、あるいは皮膚の下に痛くて固いものが触れたら、すぐに医師か看護師に相談しましょう。