トップアスリートが世界で活躍するとき、チームドクターとともに管理栄養士の同行が必須となっています。体の状態を最高に保つには、糖質・タンパク質・脂質といった3大栄養素のバランスだけではなく、それらを食べるタイミングも重要とされています。
日頃からバランスのよい食事が必須ですが、運動前はすぐにエネルギーに変換する糖質を主に摂ります。また運動直後には、壊れた筋肉を修復するため、タンパク質を主とした栄養補給を行います。
近年高齢者において、寝たきり予防のリハビリが盛んになり、またそれが推奨されています。ところが運動リハビリをした高齢者が、かえって動けなくなる例がありました。食事量が少ないために筋肉量が減っていた高齢者が、筋力強化トレーニングを熱心にしたためでした。
栄養不足の方が運動をすると、運動のためのエネルギーが必要となり、筋肉が壊されてエネルギー源になります。筋肉をつけようとして行った運動で、かえって筋肉を失うという皮肉な結果になったのです。
トップアスリートの栄養管理の考え方は、高齢者のリハビリに応用されました。管理栄養士が栄養アセスメントを行い、栄養不足があれば栄養改善を行い、その上で運動リハビリが開始されるようになりました。
さらに運動直後にタンパク質のサプリメントを摂ると、筋肉量は有意に増加することが示されました。このほうこくでは、運動2時間後の摂取では、筋肉量増加の効果は見られなかったとのことでした。
われわれの生活にほとんど関係ないと思われる宇宙開発が、日常の電化製品に応用されているように、トップアスリートの栄養管理は高齢者の寝たきり予防に生かされているのです。
これは高齢者に限った話ではありません。私たちが運動を行うときにも、栄養の専門家である管理栄養士の知恵を借りながら、豊かな生活を送りたいと思います。