「内痔核手術は1日入院で」

2005年10月29日

高岡駅南クリニック院長 塚田邦夫
第60回日本大腸肛門病学会総会(東京2005.10.28-29)発表の要旨(一部改編)

はじめに

内痔核の手術は、1週間程度の入院が多いようですが、1日1回の肛門処置、疼痛に対する鎮痛剤の注射、および腰椎麻酔による頭痛対策のためではないでしょうか。  当院では、開業当初より、痔の手術は1日入院で行ってきました。今回1日入院による内痔核の結紮切除術症例について検討し報告します。

初診時の診察

痔で来院された患者さんは全て、初診時に、全身の基本診察と病歴聴取、および服薬内容の確認を行い、リスクの有無を検討致します。抗凝固剤を内服している場合は、5日前から中止してもらいます。  仰臥位による胸腹部診察の後、左側臥位で肛門診の後、ケリー式肛門鏡で直腸・肛門粘膜を観察します。次に、荒川式肛門鏡に持ち替え、3~4回挿入を繰り返しながら、痔核を引き出して脱肛の有無を確認します。光源として自在アームを持つスカイペットIIを使用しています。

手術法

手術は朝入院し、昼に手術、夕方に退院という、1日入院で行っています。手術は、腹臥位ジャックナイフポジションで行い、痔核の根部結紮はマックギブニーを使っています。また創部は半閉鎖しています。最近は、ジオン注による硬化療法も併用しています。外来へは翌日、あるいは翌々日来院してもらいます。

治療成績の検討期間

今回2000年から5年間で検討しました。痔の手術は週2日、昼休み時間帯に行っているため、全例で140例でした。このうち内痔核は80例、痔瘻は11例でした。その他の痔手術49例とは、痔核結紮術や、外痔核血栓除去術などです。遠方の1例を除き、139例が日帰りの1日入院・あるいは外来手術でした。  内痔核結紮切除術を行った80例の内訳は、平均年齢は45.7歳でした。男性は32人で、女性は48人でした。  ゴリガー分類では、2度が7例、3度が60例、4度が13例でした。このうち内外痔核は8例でした。  肛門狭窄は9例に、裂肛は2例に合併していました。直腸膜様狭窄とホワイトヘッド肛門の合併はそれぞれ1例みられました。

内痔核手術治療結果

手術法の内訳は、切除痔核1ヶ所が10例。2ヶ所切除も10例。3ヶ所は55例。4ヶ所は4例。5ヶ所は1例でした。肛門括約筋切開術は11例に合わせて行いました。  ホワイトヘッド肛門の1例では、スライディングスキングラフトを追加しました。また、直腸膜様狭窄のみられた1例では、修復術を追加しました。  麻酔は、外来手術の6例は仙骨硬膜外麻酔のワンショット法を行いましたが、入院手術例では仙骨硬膜外持続注入法を行いました。  術後も、局所麻酔剤を持続的に注入し、疼痛対策としました。持続注入には、PCM付きバクスター社製インフューザーを用いました。 カテーテル挿入期間は、2日間が25例、3日間が25例、4日間が22例、5日間が2例でした。  80例の追跡期間は、平均10.9ヶ月で、中央値は3.1ヶ月でしたが、全例治癒しました。1ヶ月以内で来院が終わった例は25例でした。痔が治って痛みが無くなれば、もう来院されませんでした。長期通院例は、他疾患によるものです。  手術後の出血例はありませんでした。処置を要したものとしては男性の術後尿閉が2例あり、一時的に導尿、あるいはバルーンカテーテルの挿入を行いました。  手術後に肛門狭窄が1例、直腸膜様狭窄が1例みられましたが、いずれも自然治癒しました。術後に肛門皮膚の出っ張り(スキンタグ)が残っていた3例に修復手術を追加しました。  その他、1例に不良肉芽形成がみられ、硝酸銀で焼灼し治癒しました。1例で手術後潰瘍ができた例がありましたが、転勤で来院なく1年3ヶ月後に文書で治癒を確認しました。

まとめ

痔の手術は、術後2~4日間、仙骨硬膜外持続注入法を行うことで、疼痛のコントロールが容易となり、1日入院による内痔核手術が可能でした。  手術後痔核は全例治癒し、経過も順調でした。